アルド
前回は1918年以前に使われていたロシア語の文字を紹介しました。当時はギリシャ語由来の単語などで,3種類の「イ」を書き分けていました。現在はすべてИに統合されています。
ギリシャ文字 | 文字名称 | 古典ギリシャ音 | 古いロシア語 |
---|---|---|---|
Ι ι | イオタ | イ | І і |
Η η | イータ | イー | И и |
Υ υ | ユプシロン | ユー | Ѵ ѵ |
アルド
ギリシャ文字のΙ(イオタ)がロシアではІ(イー・ストーチュカイ)に,Η(イータ)がИ(イー)に,Υ(ユプシロン)がѴ(イージッツァ)になったのです。
塾生
Η(イータ)の横線がИ(イー)の斜線に……あれ……ロシア語にはН(エヌ)という文字がありますよね。
アルド
キリル文字のН(エヌ)は,ギリシャ文字のΝ(ニュー)に対応します。
塾生
こちらはΝ(ニュー)の車線がН(エヌ)の横線に……ややこしい。
ミライ姐
「正しく文字を書きましょう」と,古い時代の人に物申したいわね。
アルド
ちなみに英語のアルファベット(ラテン文字)にも,ギリシャ文字からの理不尽な変形があります。
ギリシャ文字 | 文字名称 | 対応するラテン文字 | 変化理由 |
---|---|---|---|
Π | パイ | P | Πの横棒と右棒を続け書きしたらPになった |
Ρ | ロー | R | 続け書きしたパイと,元々のローが同形になったので,1画足してRにした |
ミライ姐
だからどうしてそうなるの!
アルド
このような話は枚挙に暇がありません。例えばベートーベンの名曲『エリーゼのために(Für Elise)』は,本来『テレーゼのために(Für Therese)』だったのが,悪筆のため誤読されてエリーゼで定着したとか。
塾生
文字の読み書きって,意外と難しいんだなあ。
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