国家の公用語クラスの言語には,ほぼ例外なく文字が使われています。しかし,文字は必ずしも論理的に作られているわけではありません。
古くは,文字の読み書きは特権階級だけのものでした。
今でも読み書きが怪しい大人はたくさんいると思うけどね。
ヒトの脳は文字の読み書きができるようには作られていないのではと,私は思います。文字を発明した人も,なぜこんな設計にしたのか……私には理解できません。例えばアラビア語ではアラビア文字を使いますが,初学者にとっては難しい文字体系です。
なぜ,難しいのかしら。
アラビア文字は基本的に子音のみを表記します。母音を表す記号はありますが,教育や朗唱用以外では基本的に省略されます。例えば「こんにちは」を表す「アッサラーム・アライクム」は,アラビア文字で以下のように書きますが,ラテン文字に翻字するとalslam Alykmとなります。
السلام عليكم
このように,主に子音字だけを表記する文字のことをアブジャド(abjad)と呼びます。アラビア文字以外にも,ヘブライ文字などが該当します。子音字も母音字も記載するものが,アルファベット(alphabet)です。
日本語で例えると,漢字とふりがなのような関係になるわね。ある程度の教育を受けていれば,漢字の読み方も知っているだろうけど,子供や外国人にとっては読めない漢字も多いわね。
アラビア文字はペルシャ語やウルドゥー語などでも使われている他,かつてはトルコ系の言語でも使われていました。
トルコ語には母音が8つありますが,アラビア文字の母音記号は3つでした。
そのためトルコでは共和国初代大統領のケマル・アタテュルクによってラテン文字が導入されました。この他にも,旧ソ連のタジキスタンで使われるペルシャ語はキリル文字を採用しています。
アラビア文字では表記が難しいけど,宗教的な理由で採用した言語もあったのね。
それならば,漢字も元々は日本語を表すには向いていなかったのではないでしょうか。
そうですね。日本人は漢字の音のみを採用して万葉仮名を作りました。そこからひらがなやカタカナが生まれるわけですが……私はひらがなさえも,日本語表記には向かない文字だと考えています。
すごいことを考えているのね。
いずれ解説しましょう。
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