はじめに

2025年2月は28日かけてタイ文字の記事を投稿します。

第4週はタイ文字学習の仕上げと発展事項を学びます。

第4週の第4回はその他の記号と分かち書きについて学びます。

分かち書き?

英語などで単語間にスペースを入れますよね。タイ文字では単語間のスペースはほぼ入れないのですが,一部の単語や文末には必ずスペースを入れます。

今まで学んだ記号以外にも,まだ記号があるのね。

これまでに様々な母音記号と声調記号,そしてタイ数字を学びました。

今回は新規に3つの記号を学びます。また,記号と関連して分かち書きのルールを学びます。英語などで単語間にスペースを入れますが,タイ語では特定の記号の前後や文末だけにスペースを入れます。

日本語なら漢字とカナで単語の境目が見当付くけど,タイ文字で単語間にスペースを入れないのは大変そうね。

単語量が増えれば慣れます。
黙字記号

まずは黙字記号です。第1週の第7回でタイ語の音節構造を学んだ際,タイ語でワインはwaayだと説明しました。

英語のwineが語源だけど,タイ語では末子音-yの後にさらに-nを続けることができないのね。

タイ語の綴りはไวน์です。

綴りには-nの音であるนが含まれているのですね。でも,見慣れない記号が付いています。

これは黙字記号です。タイ語の音節構造では発音できないものの,語源の綴りを残す際に使用します。

英語からの外来語でよく使うの?

英語でもそうですし,サンスクリット語などインド古典語由来の単語でも,よく出てきます。例えばゼロを意味するタイ語のศูนย์(sǔun)は,サンスクリットのशून्य(śūnya/シューニャ)が語源ですが,サンスクリット語に存在するyの音を残すため,黙字記号付きのย์を表記しています。

なるほど。
繰返記号

続いて繰返記号です。日本語にも「人々」「山々」「佐々木」などで「々」という文字などを使いますが,直前の単語などを繰返す記号がタイ語にもあります。

直前の単語によって発音が変わるのね。

例えば「約」「およそ」を意味する単語ราว(raaw)は,音を繰り返してราว ๆ(raaw raaw)の形で用いることが多いです。

スペースの後の文字が繰返記号ですね。

ちょっと待って,スペースを入れるの?

その通りです。繰り返し記号の前後は,文末以外でもスペースを入れます。

意味を覚えておかなければ,文末と勘違いするわね。
省略記号

最後に省略記号です。長い単語を途中で省略する際に使用します。

長い単語といえばバンコクの正式名称よね。

バンコクの儀礼的正式名称をタイ文字で表記してみましょう。さすがに長いので,一部分かち書きします。

กรุงเทพมหานคร อมรรัตนโกสินทร์ มหินทรายุธยา มหาดิลกภพ นพรัตนราชธานีบูรีรมย์ อุดมราชนิเวศน์มหาสถาน อมรพิมานอวตารสถิต สักกะทัตติยวิษณุกรรมประสิทธิ์

クルンテープ・マハーナコーン・アモーンラッタナコーシン・マヒンタラーユッタヤー・マハーディロック・ポップ・ノッパラット・ラーチャタニーブリーロム・ウドムラーチャニウェートマハーサターン・アモーンピマーン・アワターンサティット・サッカタッティヤウィサヌカムプラシット

長い!

一般的にはกรุงเทพมหานคร(クルンテープ・マハーナコーン)と呼び,さらに略してกรุงเทพฯ(クルンテープ)とだけ言うこともあります。この綴りの末尾にあるฯが省略記号ですね。

わざわざ省略記号を付けるの?

クルンは「都」で,テープは「神」という意味があります。単にクルンテープだけだと「神の都」という意味になり……他の町と区別できなくなるんじゃないですか?

ちなみにマハーナコーンまで言うと省略記号がつかないけど,マハーナコーンってどういう意味。

マハーは「偉大な」という意味で,日本語でも「摩訶」という音訳語で使われています。ナコーンは「都」という意味ですね。

そうすると,クルンテープ・マハーナコーンは「偉大な都にして神の都」というニュアンスね。これなら他の町と区別……できる……かもね。

例えば出雲や伊勢は「神の都」と呼べるかもしれませんが,日本の歴史において首都だったことはないため,出雲や伊勢を「偉大な都にして神の都」と呼ぶのは過剰だと思います。

出雲と伊勢に怒られるわよ。

なお,頭文字を使った略語にはピリオドを打ちます。例えば「西暦」を意味するค.ศ.(khɔɔ sɔ̌ɔ)はคริสต์ศักราช(khrít sàkkaràat)の省略形です。

キリスト暦という意味ね。
不規則な発音の傾向

さて,以上で初級レベルに必要なタイ文字および記号類を学びました。

これでようやくタイ文字が読める。

と言いたいところですが,タイ文字と発音が一致しない単語はたくさんあります。例えばこんな感じですが,系統的に理解するよりも都度覚えたほうが早いと思います。
組合せにより別の音を表す文字がある
綴りと異なる母音や声調となる単語がある
黙字記号がなくても発音しない文字がある
意味や熟語内の位置で発音が異なる単語がある
1文字で末子音と頭子音の2音を表す文字がある

ちなみに,これらにも当てはまらない最後の特殊綴りがก็(kɔ̂ɔ)で,意味は「〜も」「〜もまた」(英: also)です。

初級レベルの単語は,1語ずつ分析して覚えないといけないわね。
タイ語の分かち書き

タイ語には一般的に日本語の句読点や,英語のピリオド,コンマに相当するものがありません。単語間も原則としてスペースを入れないため,初学者にとってはどこまでが1単語か識別しにくくなっています。

日本語だって,ひらがなだけで書かれていると分かりにくいわ。ファミコン時代のゲームは容量の関係でひらがなでしか文章を表示できなかったので,スペースが入っていたわよ。

タイ語の音節構造を理解し,単語量が増えてくれば,音節の境目となる文字や記号は見当がつきます。

結局は慣れなのね。

ちなみに改行は原則として単語の境目で行います。パソコンやスマホでは自動的に改行してくれる機能もあるようです。

繰返記号は前後にスペースが入りました。他にも文末以外でスペースが入るものはありますか。

文末を含め,スペースが入るのは以下のような場合ですが,場合によりその他の場所にもスペースが入るかもしれません。
文末及び長い従属節の末尾
数字や%記号などの前後
繰返記号ๆの前後
ピリオドが付いた頭文字略語の前後
ローマ字表記や他言語文字などの前後
3つ以上の名詞などを並列する場合

英語では毎回andを言わずにAmerica, Japan and Thaiのように表現するけど,タイ語でも同じなの?

タイ語でandに相当する単語はและ(lɛ́)です。2つの単語を並べる場合,例えば「日本とタイ」ならญี่ปุ่นและไทย(yîipùn lɛ́ thay)のようにスペースを入れませんが,3つ以上の単語を並べる場合,例えば「アメリカと日本とタイ」ならอเมริกา ญี่ปุ่น และไทย(ameerikaa yîipùn lɛ́ thay)のように最後以外はスペースが入ります。

これはさすがにスペースがないと気持ち悪いです。

以上で,タイ文字で書かれた文章を解読する材料が揃いました。

解読が読解になるよう,がんばります。
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