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お題「夢」
避難所のテレビの先は夢もがな
二十年(はたとせ)前の朝市ゆかし
能登半島地震の避難所にて
2024年1月1日,月曜日の16時10分頃,石川県能登地方で最大震度7の大地震が発生しました。
正式名称は「令和6年能登半島地震」ですが,アルドさんは「北陸大震災」と呼んでいます。
改めまして,能登半島地震で被災された方々,今も避難されている方々にお見舞い申し上げます。また,職務やボランティアとして被災直後の避難誘導,救助活動に尽力いただいた方,復興に向けて今も活動されている方々に心から感謝申し上げます。
アルドさんも,避難所の設営者側の立場を経験したのよね。
私の地区では公民館に地元住民,帰省者,観光列車の乗員乗客が避難しました。私は消防団員として,地元自治会と協力して避難者をサポートしていました。
ご苦労さまです。
今回の応募作は,避難所のテレビに写っていた輪島の朝市通り周辺の大規模火災を詠んでいるのですね。
その通りです。前にも話しましたが私は大学の授業で能登半島を一周巡り,輪島市に宿泊して朝市にも足を運んでいます。
学生時代だから約二十数年前ですね。二十年を「はたとせ」と読むのですね。
二十歳のことを「はたち」と読むのと同じですね。ちなみに今回の歌会始では皇后さまが「三十年」を「みそとせ」と読ませており,同じような言葉を使われたことで,親しみを感じました。
過去に輪島を訪れた経験もあり,消防団員であるアルドさんにとって,朝市の火災はショックも大きかったのよね。
そうですね。最初にテレビで大規模火災の映像を見たのは,避難所の公民館の2階ホールです。2階ホールには観光列車の乗員乗客が避難しており,地元の関係者ではありません。私が動揺したら,見ず知らずの土地で避難することになった観光列車の乗客は不安に思うでしょう。
誰だって動揺するわよ。
避難所で夜を明かして
私の地区では,地元関係者は自主避難に切り替えて,観光列車の乗員乗客を公民館に泊めることになりました。
元日の観光が,とんだ災難になってしまったのね。
地元からは自治会長と私が公民館に泊まることになり,私は身支度のために一旦帰宅しただけですぐに公民館に戻りました。
本当にご苦労さまです。
観光列車の乗員乗客の食事を片付けた後,私と自治会長は公民館1階の大広間で休むことになりました。エアコンの真下と思って,自宅から毛布だけを持ち込んだのですが……暖房の効きが悪くて寒かったのを覚えています。
そこはアテが外れたのね。
とはいえ,観光列車の乗客全員に毛布などが行き渡っているわけでもないので,贅沢を言える立場ではなかったのです。
避難所って過酷なんだなあ。少しはガマンすることを覚えます。
公民館1階の大広間にもテレビがあり,いつ余震があるか分からないためテレビはつけっぱなしでした。
その間,輪島の火災の映像も繰り返し流れたのですよね。
はい。実は今回の応募作のイメージは,この避難所で過ごした夜に出来ていました。どんなお題であろうとこの地震と輪島朝市の火災について詠むことを,震災当日の夜に決めていたのです。
もうひとつの災難
ところでアルドさんは2024(令和6)年の歌会始を,病院のベットの上で見ていたのよね。
2024年1月14日,日曜日,自宅付近の凍った道で転倒し,左腕と背骨を骨折しました。
なので2024年の歌会始の応募作の公開も遅れたのだけど……本当は早く公開したかったのよね。
2024年分応募作の公開どころか,2025年分の応募作も,お題が発表された瞬間に完成していました。
早すぎです。
実際のところ,骨折前に「夢もがな」の部分以外は完成していました。
そこにお題の「夢」を入れるとすれば……やっぱり「夢もがな」がベタなのね。
「夢であってほしい」という意味ですね。
天を恨まず
毎年,歌会始の応募作候補はすんなりと決まるのですが,いつも締切直前まで悩んでいます。
文学中年のアルドさんでも悩むことあるの?
言葉の使い方って,大事じゃないですか。
今回はどの言葉で悩んだのですか?
「夢もがな」ですよ。
悩まなくてもよくない?
なぜ悩んだのかというと,東日本大震災の際に中学生がこれよりも格上と思われるフレーズを口にしていたのです。震災後に宮城県の中学校で行われた卒業式の答辞で語られた「天を恨まず」という言葉です。中学生が「天を恨まず」と言っているのに,オッサンが「夢であってほしい」なんて,恥ずかしいですよ。
恥ずかしくないし,悩まなくてもいい!
まあ,そんな青臭さも含めて「アルドの短歌」だと思っています。今回は能登への思いのほうが強かったので,2月下旬には投函しました。
ところで,落選した短歌ってどうなるの?
入選以外の応募作は都道府県ごとにまとめられ,天皇陛下が目を通されることになっています。
畏れ多いことでございます。
天皇陛下は社会や国民のために祈るのが仕事です。国民が普段どのようなことを考えているかを知るために,短歌というのは最適なツールだと思います。ですから,もっと多くの国民に応募してもらいたいと思います。
本当にそうね。というわけで,応募方法については次回改めて紹介します。
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