日本は中国から儒教や仏教などの文化を学びました。
そのため現代でも中学や高校には漢文の授業があり,当時の日本人が漢文の文章から何を考えて生きていたかを学ぶのね。現代中国語もできれば損はしないけど,日本人として生きていくためには漢文の正しい理解が必要ね。
そもそも漢文とは,どのような存在ですか?
漢文は古代の書き言葉です。例えば現代標準中国語は北京を中心とする北方の方言を基に整備されたもので,北方方言以外にも広東語や上海語や客家語などの方言があります。
方言というか,すでに別言語と言ってよいレベルの違いよね。
小さな島国である日本やイギリスでさえ,隣町と言葉が違うことがあります。広い中国ではなおさらです。
昔の中国も,今以上に方言の差が大きかったけど,漢字だけは基本的に全国共通だったのよね。
そうですね。相手が何を喋っているのか聞き取れなくても,相手の書いた文字を読めば理解できる……文字の統一は秦の始皇帝の時代から行われていました。
誤解している人がいたら正してほしいんだけど,古代中国人は皆それぞれの方言で会話をしていて,公的な場での発言や作文は漢文調だったのよね。
しかも,漢文は漢字を見て理解するという前提があります。漢字には意味がありますが,発音のバリエーションはそれほど多くはありません。
確か,現代中国語では400種類程度の音しかないのよね。
そのため,耳で聞いただけではわかりにくい表現が多くあります。例えば教師,先生という意味の中国語は老师/lǎoshīです。
若い先生でも「老師」なのですね。
师/shīだけでは同じ発音の文字が多く,意味が確定しません。おそらく古くからlǎoshīのような発音をしていたのでしょうが,文章を書くときは意味の伝わる師だけを書いたのでしょう。近代になって表記が整備され,lǎoの部分に老の字が当てられたと思われます。
現代の中国人が,漢文をそのまま中国語読みしても通じないのですね。
詩歌を味わう場合は別ですが……これも標準中国語の音で読む場合と,広東語などの発音で読む場合で,印象が変わります。次回はこの点を説明しましょう。
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