小学5年生の時,ある日の宿題が「加賀百万石の百万石は何リットルになるか」でした。
修学旅行で金沢に行く前に出されたのね。江戸時代は経済力をお米の生産量で表していて,石(こく)はその単位のひとつね。
スーパーでお米は,リットルではなくキログラム単位で売っています。でも,ご飯を炊くときは1合,2合と数えています。
昔は穀物を重さではなく嵩(かさ)で測っていました。今でも「かさばる」という単語を使いますね。
「かさばる」とは,大きくて場所をとることです。
嵩は大きさと思っていいです。昔は同じ品質の秤(はかり)や錘(おもり)を大量に流通させることができませんでした。そのため,取引相手が持っている錘が本当に正確なのか,庶民には確かめようがありませんでした。
錘を削ってごまかすことも可能ですね。
一方,同じ長さの「ものさし」を大量に作り,それを使って同じ大きさの容器を大量に流通させるのは比較的簡単ですね。織田信長や豊臣秀吉も枡(ます)という容器の大きさを統一させましたね。
「ものさし」と「じょうぎ」は違うのですか?
ものさしは「長さを測る」ための平板で,じょうぎは「直線を引く」ための平板です。兼用できるものもありますが。
容器の大きさのことを「容積」といいます。しかし,科学技術の世界では物体そのものの大きさを表す「体積」という言葉を使います。
前回,面積について学びましたが,面積とは1×1の正方形をどれだけ敷き詰めるかを示したものでしたね。同じように,体積とは1×1×1の立方体をどれだけ詰め込めるかを表したものになります。
だから長方体の体積はたて×よこ×高さになるのね。
複雑な図形も切ったり貼ったりして長方体(立方体の集合体)にすれば体積が計算できます。複雑な図形は定積分の知識が必要ですが,この公式は覚えましょう。
図形 | 体積の公式 |
---|---|
柱(太さ一定) | 底面積×高さ |
錐(すい:ピラミッド状) | 底面積×高さ÷3 |
球 | 半径×半径×半径×3.14×4÷3 |
体積は必ず長さ×長さ×長さで表現できるので,単位は長さの3乗よね。メートル×メートル×メートルなら,立方メートルで,立米(りゅうべい)とも呼ぶわね。今回はお米の話から始まったけど,米という字はメートルの当て字でもあるわね。
記号ではm3で,メートルのmの右肩に,小さく3と書きます。パソコン上で表記が難しい場合はm^3やm3などと書くこともあります。ちなみに,立方と3乗は同じ意味です。
同じように,立方ミリメートル(単位はmm3),立方センチメートル(単位はcm3),立方キロメートル(単位はkm3)などの単位もあるのですね。
面積の計算と同じように単位を揃えるのは必須ね。
日常では立方ミリメートルと立方センチメートル(別名:cc)をよく使いますが,これらは1000倍違います。立方メートルと立方ミリメートルともなれば,10億倍も違うので,計算を間違えると本当に桁外れになります。
面積ではアールやヘクタールを補助的に使いますが,そのようなものは体積にもあるのですか。
それがリットルですね。一辺が10cmの立方体の体積を1リットルといいます。さて,1リットルを立方センチメートル,立方メートルで表してみましょう。
1000立方センチメートル,あるいは0.001立方メートルですね。
私は1立方メートル=1000リットルと覚えています。ちなみに,リットルはフランス語読みです。英語読みでリッターとも言うこともあるのはメートルと同じですね。
リットルの単位は本来小文字のl(エル) だけど,数字の1(イチ)と紛らわしいので,大文字のLをよく使うわね。日本では筆記体のℓで教えていた時代もあったけど,単位は筆記体にしないのが国際標準よね。
リットルにも接頭辞をつけて,1000リットルは1キロリットル(単位はkL),10分の1リットルは1デシリットル(単位はdL),100分の1リットルは1センチリットル(単位はcL),1000分の1リットルは1ミリリットル(単位はmL)などの単位があります。
飲料容器の大きさはリットルやミリリットルで表すけど,飲料製造会社ではタンクの大きさをキロリットルで表すわね。舶来品のワインボトルの中には,センチリットル表記のものもあるわ。
私たちはワインを飲めません。どころで,算数の授業でデシリットルを習いましたが,教科書以外では見かけません。
確かにデシリットルは日常では見かけませんが,豆,穀物,種などは2デシリットル単位で取引する場合があるようです。また,健康診断で血糖値を測りますが,これは血液1デシリットル中に,糖が何ミリグラム含まれているかを表す数値です。
豆などは,なぜ1デシリットルではなく,2デシリットル単位なのですか?
良い質問ですね。みなさんもご飯を炊くときに「合」という単位を使いますが,1合は約1.8デシリットルを表します。かつては豆なども1合単位で取引していましたが,現在は「計量法」という法律により,合という単位での取引が禁止されています。そのため,近い数字である2デシリットルを使うようになったそうです。
かつて日本では,体積の単位として次のようなものを使っていました。小さい方から,10倍ごとに増えていきます。
日本の単位 | リットル換算 | 用途・目安・名残り |
---|---|---|
合(ごう) | 約180mL | 成人1人1食分のお米の消費量 |
升(しょう) | 約1800mL | 醤油やお酒など(一升瓶) |
斗(と) | 約18L | 灯油・塗料など(一斗缶) |
石(こく) | 約180L | 成人1人1年分のお米の消費量 |
灯油のポリタンクが18Lなのは,かつて一斗缶を使っていた名残りなのね。
さて,加賀百万石とは,お米の生産量が1億8千万リットルという意味になります。
1石は成人1人1年分のお米の消費量だから,加賀では100万人を1年間養えるということですね。
金沢の人が自慢気に「加賀百万石」と連呼する気持ちも分かるわ。
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