はじめに
アルドさんが毎年応募している歌会始の応募要領を説明します。ちなみに2026(令和8)年のお題は「明」となります。
応募要領は基本的には宮内庁のホームページに書いてあるのですが……詳しく解説しましょう。
短歌とは
そもそも短歌とはどのような形式ですか。
短歌は五七五七七の定形を持つ詩の一種です。
似たようなものに俳句や川柳があります。
それらは五七五の定形です。俳句は伝統的に季節を連想させる「季語」を詠み込みます。川柳は季語不要で社会風刺などをテーマに詠みます。
短歌に季語は必要ですか?
あってもなくても構いません。季節の歌には必然的に季語相当語が入るでしょうが,短歌のテーマは季節以外にも恋愛,旅行,祝賀,哀悼など様々詠まれてきた歴史があります。
国歌「君が代」も短歌形式だけど,季語はないわね。
五七五七七はどのように数えるのですか?
基本的には仮名にしたときの文字数です。例えば「おばさん」は4音で「おばあさん」は5音です。
「肩(かた)」は2音で「カッター」は4音ね。
注意点として「きゃ」「きゅ」「きょ」「ティ」「ファ」のような組み合わせは2文字ですが1音として扱います。
例えば「キューティクル」は5音ね。
そんな単語を短歌で使うのでしょうか。
単なる例よ。
上級レベルになると音数が超過する「字余り」や不足する「字足らず」をあえて使う場合もあります。しかし,どうしても「字余り」「字足らず」でないと表現できない場合以外は五七五七七の定形を守ったほうがよいでしょう。
お題とは
さて,歌会始で募集する短歌にはお題が与えられています。天皇陛下がお題を決め,歌会始当日に次回のお題が発表されます。2026(令和8)年は「明」ですね。
最近は基本的に漢字1文字よね。
短歌の中にお題の1文字を読み込む必要があるのですね。
お題そのまま1文字の単語でもいいですし,熟語や訓読みなど別の読み方でも構いません。お題の漢字を調べて印象に残った単語と,自分の経験を結びつけると,おもしろい歌になると思います。
歌会始応募のルール
歌会始に応募することを詠進(えいしん),応募する短歌および提出する用紙のことを詠進歌(えいしんか)といいます。
まずは短歌の形式で,お題の文字(2026年は「明」)を詠み込んでいることが必須ね。あとは……差別的な表現や不謹慎な単語は……そもそも応募する人はそんなこと考えないわね。
いわゆる「パクリ」も失格ですよね。
あとは多少の「字余り」「字足らず」は問題ありませんが,声に出してみて違和感がある場合は避けるべきでしょう。
応募用紙はどこで手に入れるのですか?
市販の習字用の半紙を使い,毛筆で書きます。お持ちでない方は,文房具店やホームセンターなどで半紙,下敷き,小筆,墨汁をお買い求めください。日本国外から応募する場合は半紙に毛筆でなくてもよいとのことですが,用紙サイズは半紙(24cm×33cm)に合わせる必要があります。
硯は?
墨汁を使うのなら適当な容器で構いません。
筆ペンでもいいですか?
毛筆に見える筆ペンは許容されているようですが,なるべく筆と墨汁を使うべきでしょう。もちろん,明らかに毛筆でない筆跡は失格となります。
字の上手な人に代筆してもらうことはできるの?
代筆だけでなく,そもそも歌会始実施前に詠進歌を公表すること自体が失格となります。
新聞や雑誌に投稿したり,年賀状に書いたりしてはいけないのね。アルドさんも毎年歌会始が終わってから公表しているわね。
ただし,病気や障害等で自書できない場合は,代筆またはパソコン等で印刷したものを,理由書を添えて応募することは可能です。また,視覚障害者は点字での詠進が可能です。これらの理由以外は,自書必須です。
複数の短歌を応募してもいいですか?
1人1作品と決められています。複数応募した場合はすべて失格となります。
厳しいですね。
ちなみに知り合いが応募したら記載不備で宮内庁から連絡があったそうです。
一瞬,入選したかと思ってしまうわね。
知り合いの発言だけで,宮内庁に裏を取ってはいませんが……連絡なく失格にされる可能性もあります。
詠進要領に従うことが大事ね。
詠進歌の書き方
さて,半紙に毛筆で詠進歌を書いてみましょう。ご存知かもしれませんが半紙はなめらかな方が表面です。横長で使いますが,あらかじめ中央部に山折りの折り目を付けておきましょう。
右利きの方は(左利きでも毛筆は右手の方は),墨が乾くまで紙に触れないようにしましょう。
右ページにはお題と短歌を書きます。基本的には上の句(五七五)で1行,下の句(七七)で1行として書くこととなります。ちなみに宮内庁が公表している書式では2行になっていますが,NHKで紹介された書式では5行となっていました。意味が分かりにくくなるほどの改行は避けるべきですが,書道の熟練度や文字数の都合等で行が増えたとしても失格にはならないようです。
練習して2行に収めるのが無難ね。特殊な読み方や,複数の読み方がある漢字にはふりがなを付けておきましょう。
意外と小さい字で書くことになりそうですね。
左ページには郵便番号,住所,電話番号,氏名(本名,ふりがな),生年月日,職業を書きます。以前は性別も書いていましたが,今回から不要になったようです。
数字は漢数字ですか?
基本的には漢数字(一二三四五六七八九〇)とハイフン(たて棒)で書くことになりますが,算用数字(1 2 3 4 5 6 7 8 9 0)でも失格にはならないそうです。
職業って,どこまで書くの?
学生・生徒であれば
「糸魚川市立黒姫山中学校 三年生」
「長野県姫川蓮華高等学校 普通科 三年生」
「はくたか大学理学部地球惑星物理学科 三年生」
などと書きます。勤め人であれば
「かわせみ加工機株式会社 業務部 勤務」
「長野県姫川蓮華高等学校 教諭」
「姫川病院 眼科 勤務医」
などと書きます。
自営業などの場合は?
例えば
「姫川廃墟クリニック 院長 開業医」
「姫川温泉商店 自営業」
などになると思いますが,判断が難しい場合は宮内庁式部職にお問い合わせください。
主婦や退職者は?
「主婦」「無職」でも構いませんが,以前職業に就いていた場合はなるべく元の職業を書いてください。例えば
「元 糸魚川市立黒姫山中学校 校長」
などですね。
これで全部完了ね。
ポストに投函
あとは詠進歌を封筒に入れて郵送します。もちろん,家族や学校などで応募する場合も1人1通ですよ。
一緒に郵送したら,他人に公表したことになるのね。
封筒は何を使えばよいですか?
文房具店やホームセンターなどで売っている市販品で問題ありませんが,あまりに薄いものは中身が透けるので避けたほうがよいでしょう。
封筒のサイズは?
一般的には長形4号か,少し大きめの長形3号がよいでしょう。どちらも詠進歌1枚であれば定形郵便(2025年1月現在:110円)で送れるサイズです。なお,詠進歌は小さく折りたたんで封入しても問題ありません。
封筒の宛名は?
郵便番号は100-8111で,住所は不要です。中央に「宮内庁 御中」,左下に「詠進歌」と書いてください。また,一般常識として裏面に自分の郵便番号,住所,氏名を書いておきましょう。また,封筒はのりや,はがれにくいテープで封をしましょう。
切手を貼り忘れると戻ってきます。封が取れると中身の詠進歌が行方不明になります。
締切は?
9月30日消印有効です。年によっては9月末が土日と重なる場合もあるので注意しましょう。ちなみに2025年9月30日は火曜日ですのでご安心ください。
大きな町の中心的な郵便局なら土日の営業時間に窓口に出せばいいけど,地元の小さな郵便局はポストの集荷時間をチェックしておく必要があるわね。
余裕を持って,遅くとも9月中旬までには投稿したほうがよいと思います。
さいごに
それでは2026(令和8)年のお題「明」について,みなさんも詠進をご検討ください。
本記事は私の経験や,ネットでの信頼できる情報を元に記載していますが,あくまで宮内庁ホームページの記載事項が正となります。また,不明な点がある場合は宮内庁式部職宛に郵送でお問い合わせください。
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