はじめに
寺子屋「図南之翼」の2025(令和7)年初講義を開講します。
明けましておめでとうございます。
2024年はアルドさんが骨折して,そのままブログ更新を怠っていたけど,2025年は投稿頻度を増やすのかしら?
投稿がんばります。
今年もお勉強がんばります。
それでは,休止していた『ロシア語検定3級の移動動詞全知識』を続けます。
前回講義は2024年2月21日でした。復習が必要な方はこちらをご覧ください。
ロシア語検定3級に必要な動詞の活用
ロシア語は単語が語形変化する言語で,動詞も様々に活用します。しかし,ロシア語検定3級に必要な知識は下記の通りです。
原形
過去形(男性,女性,中性,複数)
非過去形(1人称単数,2人称単数,3人称単数,1人称複数,2人称複数,3人称複数)
命令形(2人称単数,2人称複数)
形動詞(能動現在,能動過去,受動現在,受動過去)
副動詞
形動詞や副動詞は英語の分詞のようなものですが,ロシア語検定3級には不要です。また,命令形には2人称単数と2人称複数がありますが,基本的には丁寧な2人称複数だけを覚えておけばよいです。
ロシア語には不完了体と完了体の区別がありますよね。
それは別々の動詞で表現します。ちなみに不完了体と完了体の動詞の使い分けは,検定2級の出題範囲です。
とりあえず,不完了体や完了体は気にせず,出てきた動詞をそのまま覚えればよいのね。
それでも12の変化形を覚える必要があるのですね……そういえばロシア語の名詞も単複や格で12通りに変化するのでした。どっちも覚えるのは大変です。
アルドさんがロシア語の名詞や形容詞の格変化を覚える際,一般的な教科書とは異なる順番に並べ替えていたわよね。
今回も並べ替えます。
原形 | 非過去・2人称単数 |
過去・女性 | 非過去・3人称単数 |
過去・男性 | 非過去・1人称複数 |
過去・中性 | 非過去・2人称複数 |
過去・複数 | 非過去・3人称複数 |
非過去・1人称単数 | 命令・2人称複数 |
非過去1人称単数の位置がおかしい。
実は非過去形は2人称単数からスタートすると覚えやすいのです。
まさか!
それでは順を追って説明しましょう。
原形は3パターン
原形 | 非過去・2人称単数 |
---|---|
過去・女性 | 非過去・3人称単数 |
過去・男性 | 非過去・1人称複数 |
過去・中性 | 非過去・2人称複数 |
過去・複数 | 非過去・3人称複数 |
非過去・1人称単数 | 命令・2人称複数 |
表の左上は原形です。不定形と呼ぶこともあります。
原形にパターンはあるのですか。
そのまま覚えるしかありません。語尾は3パターンあります。
語幹+ть(一般的な語尾)
子音末語幹+ти́(語尾にアクセントがある)
母音末語幹+чь(特殊な語尾)
ちなみに原形語尾だけでは活用は確定しません。過去形や非過去形の詳細は単語ごとに覚える必要があります。
過去形は女性から流れ作業で
原形 | 非過去・2人称単数 |
過去・女性 | 非過去・3人称単数 |
---|---|
過去・男性 | 非過去・1人称複数 |
過去・中性 | 非過去・2人称複数 |
過去・複数 | 非過去・3人称複数 |
非過去・1人称単数 | 命令・2人称複数 |
過去形は女性から覚えると,暗記が楽になります。
形容詞も女性形からだったわね。
過去・女性は原形語尾тьなどをлаに置き換えます。ただし,語幹が変化する単語も存在します。また,力点位置は単語ごとに語幹か語尾かを覚える必要があります。
次は男性形ですね。
男性形は語尾をлに置き換えます。男性語尾には母音がないので,力点は必ず語幹にあります。語幹は女性形と共通の場合が多いですが,短い単語の場合は不規則になる場合もあります。
移動動詞の中には語尾のがない単語や,発音が変わってёになる単語もあるわね。
力点のないеに,力点が移ると単語によりе́となったりёになったりしますが,これは語形変化というよりは,ロシア語の発音上の問題です。
男性形は基本的に女性形からаを落とせばよさそうですが,一部の単語は男性形も個別に覚える必要がありますね。
中性形と複数形はまとめて覚えられます。
語尾をлоやлиに変えるのね。力点は?
多くの単語は女性形と同じですが,女性形は語尾なのに中性・複数では語幹というパターンもあります。また,語幹と語尾どちらに力点をおいてもよい単語も存在します。なお,中性と複数の力点位置は一致します。
そうすると過去形の力点位置は「全部語幹」「男性以外で語尾に移動」「女性形だけ語尾」の3パターンになるのね。
だから女性,男性,中性,複数の順で覚えるとよいのですね。
非過去2人称単数から機械的に
原形 | 非過去・2人称単数 |
---|---|
過去・女性 | 非過去・3人称単数 |
過去・男性 | 非過去・1人称複数 |
過去・中性 | 非過去・2人称複数 |
過去・複数 | 非過去・3人称複数 |
非過去・1人称単数 | 命令・2人称複数 |
それでは次は非過去形です。
2人称単数から覚えるのは納得できません。
どんな意図があるの?
2人称単数を覚えれば,3人称単数から2人称複数までは自動的に確定します。
1人称単数と3人称複数は,必ずしも規則的とは限らないのね。
1人称単数と3人称複数は,ともに語幹が変化する場合があります。また,1人称単数は力点も移動する場合があります。
なるほど。
それでは細かく見ていきましょう。非過去2人称単数は,原形のтьなどをそのままешьに置き換えるか,語幹末の母音も落としてからишьに置き換えます。
例えばбежа́тьはа́тьを取ってбежи́шьになり,бе́гатьはтьだけを取ってбе́гаешьになるのね。
どちらの語尾を取るかは,単語ごとに覚えなければならないのですね。
力点位置が原形と異なる場所に移動する場合もあります。ちなみに語尾のешьに力点が移動してきた場合はёшьとなります。
過去男性形にもёが現れることがあったわね。
それから,これが最重要項目ですが,音の交代,脱落,挿入などにより語幹が変化する単語もあります。
例えばе́хатьがе́дешьになったり,плы́тьがплывёшьになるのね。
さて,2人称単数から3人称単数,1人称複数,2人称複数は機械的に導くことができます。語幹と力点位置が同じで,語尾の-шьを-т, -м, -теに変えるだけです。
移動の動詞14語に関しては例外ないのね。
非過去3人称複数は少しだけ例外あり
原形 | 非過去・2人称単数 |
過去・女性 | 非過去・3人称単数 |
過去・男性 | 非過去・1人称複数 |
過去・中性 | 非過去・2人称複数 |
過去・複数 | 非過去・3人称複数 |
---|---|
非過去・1人称単数 | 命令・2人称複数 |
続いて3人称複数です。こちらは一部の単語で2人称単数と語幹が異なる場合がありますが,力点位置は2人称単数と同じです。
活用語尾はどうなるのですか?
まずはешьタイプです。こちらは語幹末が母音の場合は必ずютに,子音の場合は基本的にутに置き換えます。力点位置は2人称単数と同じです。
そこで区別するんだ。
次にишьタイプです。こちらは語幹末をятに置き換えますが,綴り字の規則によりатとなる場合があります。
でもбежа́тьはбежи́шьからбегу́тになります。
その語尾は例外です。覚えるしかありません。
非過去1人称単数は少し厄介
原形 | 非過去・2人称単数 |
過去・女性 | 非過去・3人称単数 |
過去・男性 | 非過去・1人称複数 |
過去・中性 | 非過去・2人称複数 |
過去・複数 | 非過去・3人称複数 |
非過去・1人称単数 | 命令・2人称複数 |
---|
最後に1人称単数形ですが,これだけ孤立している場合があります。
つまり,語幹も力点位置も異なる。
そうですね。語幹については個別に覚える必要があります。ちなみに非過去形の語幹は「全部同じ」「1人称単数のみ異なる」「1人称単数と3人称単数が他と異なる」の3パターンとなります。
3人称単数が他と異なる語幹なら,1人称単数もその形になるのね。
でも,1人称単数だけ異なるのは,覚えるの大変だなあ。
なので,私の活用表では1人称単数を孤立した位置に記載しています。
なるほどね。活用語尾は?
まずешьタイプはюまたはуに置き換えます。どちらになるかは3人称単数と同様です。次にишьタイプはюに置き換えますが,綴り字の規則によりуとなる場合があります。
つまり,どちらのパターンもюまたはуに置き換えるのですね。
その上で,力点位置が移動する場合もあるのよね。
そうですね。非過去形の力点位置は「全部同じ」「1人称単数のみ異なる」の2パターンとなります。
改めて活用表を眺める
原形 | 非過去・2人称単数 |
過去・女性 | 非過去・3人称単数 |
過去・男性 | 非過去・1人称複数 |
過去・中性 | 非過去・2人称複数 |
過去・複数 | 非過去・3人称複数 |
非過去・1人称単数 | 命令・2人称複数 |
ロシア語検定3級では大問IIで命令形が出題されますが,移動動詞の命令形が問われることは稀です。命令形対策は別の機会に講義します。
過去形と非過去形を覚えるのは大変だけど,規則性が見えたら覚えやすいわね。語幹が変わったり,力点が移動したり,語尾が変わったりするところに注意すればいいのね。
ちなみに,ロシア語検定3級では大問Vの比較級を力点記号付きで書く以外,力点は表記しませんので,大問VIとVIIの移動動詞対策だけなら,力点を覚えるのは後回しでも構いません。
その場合,リスニングや朗読でコケそうです。
確かにそうですが,リスニングで力点位置の違いだけの紛らわしい単語を聴き分けないと答えられないような問題は見当たりません。朗読では最後まである程度読めていれば,ちょうど30点で合格させてもらえます。
合格させてもらえるらしい……と言っておかないと,不合格者から苦情が来るわよ。
承知しました。ちなみに私は,朗読問題でちょうど30点で合格しました。
あくまで噂です。
それでは次回講義で大問VIとVIIの移動動詞の問題対策をします。
どの単語を選び,どの活用形にするのかを判断しなければならない,3級文法問題のヤマ場ね。
それまでに活用形を覚えておきます。
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