私は国立大学理学部を出ている理系ヲタクではありますが,実は宗教オタクでもあります。
外国語ヲタクなので,容易に想像できます。
ちなみに手帳に「日本の旧暦」とイスラム教の暦である「ヒジュラ暦」を書き込んでいます。
ラマダンもバッチリ把握できるわね。宗教ヲタクということは,実家は特殊な宗教なのかしら?
言われてみれば特殊ですね。本業は仏教の曹洞宗ですが……
あとは家に神道の神棚もある……それだけだと普通の日本人ね。
曹洞宗の菩提寺は,家から離れた市街地にあるお寺です。日常的なお参りは,近所の真宗大谷派のお寺とお付き合いをしています。
まさか3つの宗教とは……
我が家の過去帳で一番古いのは貞享4(1687)年没で,曹洞宗の戒名の男性です。
江戸時代から続いているんですね。
時々,真宗大谷派の法名の男性もいます。変な信仰ですね。
真宗大谷派を含む浄土真宗では,戒名のことを法名と呼ぶのね。
ところで,お経の経の字はなぜ糸へんなのですか。前からずっと気になっていたんです。
いい質問ですね。仏教発祥の地インドの言語で,仏教の典礼言語であるサンスクリット語では,お経のことをसूत्र/sūtra(スートラ)といいます。このスートラの原義が「糸」なのです。
でも,そこから漢字文化圏に伝わって,なぜ「経」という字が選ばれたのかしら。
スートラを「経」と訳した経緯は……そう,まさに経緯です。経緯はいきさつとも読みます。この熟語がなぜ糸へんなのかといえば,経は「縦糸」を,緯が「横糸」を意味するからです。
中島みゆきさんの「糸」ですね。
織物は糸を縦横に組み合わせて作ります。最初に縦糸を平行に張っておいて,そこに横糸を通します。最初に張った縦糸は,織物の核となるものです。
横糸を工夫することで,織物に多様なデザインが生まれるのね。
お経というのは宗教の核となる考えをまとめたものです。宗教が誕生するまでは存在しない言葉でしたが,サンスクリット語でも漢文でも,書物にちなんだ言葉ではなく,糸にちなんだ言葉で表現したのです。
複雑な経緯(いきさつ)を経て,偉大な宗教の教えが今に伝わっているのですね。
ちなみに,地理の授業で経度と緯度を学びますね。
どちらが経線でどちらが緯線か,うまく覚えられなかったけど,縦糸と横糸の話を聞いたらすぐに覚えられそうね。縦線が経線で,横線が緯線なのね。
また,経線のことを子午線とも言います。
子(ね)と午(うま)……十二支は方角も表すのでしたね。
北極点と南極点を通る円なので子午線ですね。子午線は無限に引くことができます。例えば日本は「東経135度」の子午線が通る場所を時刻の基準としています。
漢字も地理も勉強できて,今日は得した気分です。
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