トルコ語は,日本語と語順が似ているので学びやすいとされています。しかしながら「まえがき」にそう書いてあるトルコ語のテキストの第1課の例文が,日本語と勝手が違う場合もあるのです。まずは簡単な例文をご覧ください。
太郎は日本人です。
Taro Japonca.
Japoncaはジャポンヂャと発音します。現代日本語では「ジャ」と「ヂャ」は同じ発音で,「チャ」を濁らせた発音となります。そのため,「ジャ」は音声学的には間違った表記ですが,正書法上は原則として「ジャ」と書きます。「シャ」は舌先をどこにも付けませんが,「チャ」は上の歯の裏に下が付きます。それらを濁らせると「ジャ」と「ヂャ」になるのですね。
トルコ語には,英語のbe動詞に相当する単語はないように見えるわね。助詞の「は」もないのね。
実は日本語でも,助詞が何も付いていない名詞は,一般に主語を表します。特に高校の古文の学習参考書には「人物名の後にテン(読点)があれば98%主語」と書いてあるほどです。しかし,トルコ語では主語が「私」や「君」になると変化が起こります。なお,iではなく点のつかないıは日本語のウに近い音です。
私は日本人です。
Ben Japonca’yım.
君は日本人です。
Sen Japonca’sın.
語尾にyımやsınなどが付くのですね。
固有名詞(民族名など)の場合はアポストロフィーを付けます。主語が3人称なら単語を並べるだけで済みますが,1人称と2人称の場合には語尾に人称の付属語を付けます。日本語では「だ」に相当する単語ですね
Ben 〜 yımとSen 〜 sınで覚えればいいのですか?
実は,トルコ語には母音調和というものがあり,人称の付属語は単語の最終母音によって変わります。Japonca(日本人)は最終母音がaなので,yımやsınになりますが,最終母音が異なる場合は,付属語の母音も変化します。例えば Türk(トルコ人)の場合はこうなります。
私はトルコ人です。
Ben Türk’üm.
君はトルコ人です。
Sen Türk’sün.
母音が変わるのね。しかも1人称では子音で終わる単語にはyが脱落するのね。それでは,人称の付属語のまとめです。
最終母音 | ben(私) | biz(私たち) | sen(君) | siz(君たち) |
---|---|---|---|---|
a, ı | -(y)ım | -(y)ız | -sın | -sınız |
o, u | -(y)um | -(y)uz | -sun | -sunuz |
e, i | -(y)im | -(y)iz | -sin | -siniz |
ö, ü | -(y)üm | -(y)üz | -sün | -sünüz |
ちなみに,sizには「君たち」だけでなく,単数フォーマルの「あなた」の意味もあります。これは,ヨーロッパ言語によくある現象ですね。
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