はじめに
本日は余りのある割り算について,小学校算数から高校数学まで一気に学びましょう。
小学校算数では余りを求めたけど,中学数学以降は分数表記だったから余りを求めなかったわよね。
しかし数学では余りこそ重要なのです。
用語と小学校算数での表記
まずは用語を押さえましょう。主に小学校で使う和語による用語と,主に高校以降で使う漢語による用語,そして英語名を掲載します。また,文字\(m\), \(n\), \(q\), \(r\)は整数とします。
文字 | 和語 | 漢語 | 英語 |
---|---|---|---|
\(m\) | 割られる数 | 被除数 | dividend |
\(n\) | 割る数 | 除数 | divisor |
\(q\) | 割り算の答え | 商 | quotient |
\(r\) | 余り | 剰余 | remainder |
例えば\(11 \div 5\)について余りを求める場合,現在の小学校の教科書ではこのように書きます。
\(11 \div 5 = 2\) あまり \(1\)
あたしはこのように習ったわ。
\(11 \div 5 = 2 \cdots 1\)
私の時代の教科書もそうでした。点3つで「あまり」と覚えたものです。
今はきちんと「あまり」って書くのね。しかもひらがなで。
昔の教科書は点3つで済んでいたから,書くのは早そうです。
点3つにしても,言葉で「あまり」と書くとしても,数学的には正式な書き方ではありませんが,商と余りの概念を身につけるためには必要な表記かもしれません。
商と余りは1つに決まる
割り算に限らず,計算にはルールがあります。
0で割ってはいけないとか。
時々SNSなどで0で割る算数のテストが取り上げられたりするけど,あれはネタ……よね?
小学校教員になるためには,数学が得意である必要はないため実話の可能性もあります。
それは困るから,アルドさんと勉強しなきゃ。
0で割ってはいけない理由は機会があれば別に説明しますが,小学校算数の割り算で最重要なルールは「余りは割る数より小さい」ということです。例えば\(11 \div 5\) は「2あまり1」とすべきであり,「1あまり6」としてはならないのですね。
筆算していて,余りの過不足が分かると再計算という憂鬱が待っています。
ところで,1あまり6にも意味がある場合があります。例えば「11個の品物を5人に分配する」だけなら「2個ずつ分配して,1個余る」となりますが,仮に「11個の品物を5人に分配するが,3個以上残しておきたい」という条件なら「1あまり6」です。
このような条件のシチュエーションもありうるわね。
ただし,算数のテストとしては答えを1つに決める必要がありますので「余りは割る数より小さい」という制約を設けています。
なるほど。
中学校で習う割り算
中学校では負の数を習うけど,負の数まで拡張すれば\(11 \div 5\) は「3あまり-4」とも言えるわね。
そうですね。そのような考え方は合同式を扱うときに役立ちます。
でも,中学校で余りのある割り算をした記憶がないわ。割り算はそのまま分数に直していなかった?
算数と違い,数学では余りそのものを計算で求めることを重要視しません……多分。
負の数まで拡張しても,商と余りは1つに決めなければならないのですよね。
そうですね。中学数学では\(m\)も\(n\)も負になる可能性があります。これにより商\(q\)も正負どちらか(または0)になるのですが,余り\(r\)は必ず正の数(または0)です。
中学数学教科書には\(m\)と\(n\)の正負による\(q\)の正負判定法が書かれています。
\( mn > 0 \Longrightarrow q > 0 \) ( \(m\), \(n\)が同符号なら\(q\)は正)
\( mn < 0 \Longrightarrow q < 0 \) ( \(m\), \(n\)が異符号なら\(q\)は負)
\( m = 0 \Longrightarrow q = 0 \) ( \(m\)が0なら\(q\)は0)
中学数学では余りのある割り算をする機会が少ないと思いますが,商と余りを1つに決めるため,余りは正の数とします。
割るが負の数だったらどうしますか?
その場合は割る数の絶対値と比較します。絶対値記号は高校数学で習うのですが,とりあえず数式を書いてみましょう。
\( |n| > r \ge 0\)
(\(r\)は\(n\)の絶対値よりも小さく,0以上)
これで\(m\)と\(n\)の符号組み合わせ4パターンの商と余りが決まるわね。
\(11 \div 5 = 2\) あまり \(1\)
\(-11 \div 5 = -3\) あまり \(4\)
\(11 \div (-5) = -2\) あまり \(1\)
\(-11 \div (-5) = 3\) あまり \(4\)
すごいですね。
高校数学での割り算の表記
さて,余りを表記するのに点3つや,ひらがなで「あまり」と書くのは数学的に厳密ではありません。よって,高校以降ではこのように表記します。
\(m = qn +r\)
(\(n \neq 0\), \(|n| > r \ge 0\))
シンプルね。
この数式でも商と余りが成り立つか確認してみましょう。
\(11 = 2 \times 5 +1\)
\(-11 = -3 \times 5 +4\)
\(11 = -2 \times (-5) +1\)
\(-11 = 3 \times (-5) +4\)
なるほど。
ちなみにこの式の形は,多項式にも拡張されます。
高校数学では整数を体系的に習わないから,余りといえば多項式だったわね。
整数を体系的に理解して,合同式なども使いこなせるようになれば,日本の科学的リテラシーも上がることでしょうが……数学のカリキュラムって,どうしてこんなにスカスカなんでしょう。
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