サッカーJリーグは1993年に創設されましたが,オリジナル10と呼ばれる創設当初の10チームのひとつに,サンフレッチェ広島があります。サンは日本語で数字の3,フレッチェはイタリア語で矢の複数形です。
毛利元就の「三本の矢」に由来する名前ね。当時,中学校の朝礼で校長先生が毛利元就の話をしていた記憶があるわ。
当時の私はまだ語学マニアではありませんでしたが,イタリア語でフレッチェという単語に違和感を覚えました。
でも,当時はイタリア語を知らないですよね。
そうですが,イタリアでは古代にラテン語という言語が話されていたことは知っていました。そして,黄道十二星座のひとつである射手座を,ラテン語でSagittariusということは知っていました。
どう読むのですか?
サジタリウス……古代の読み方ではサギッターリウスですね。また,射手座の他に「矢座」という星座もあり,ラテン語でSagittaという言葉も見たことがありました。
サギッタ……サジッタ。
ラテン語からイタリア語が分化していたとすれば,全く異なる語形になるのは不思議ね。
そうですね。ですからイタリア語でも「矢」はサジッタのような語形になるのではと思ったのです。
すごい言語感覚だなあ。
ところで,イタリア語のフレッチェの由来は?
単数形はfreccia(フレッチャ)で,複数形はfrecce(フレッチェ)といいます。調べてみたところフランス語からイタリア語に入った単語のようです。ちなみに,現代フランス語ではflècheです。また,スペイン語とポルトガル語ではflechaです。
でも,フランス語もラテン語から分化した言語よね。
そうですね。実はフランス語のflècheも,元をただせばオランダ語のvliegen(飛ぶ)の古い形が由来のようです。
奥が深いわね。ところで,ラテン語のsagittaは現代語に引き継がれていないの?
例えばカタルーニャ語のsageta,ガリシア語のseta,ルーマニア語のsăgeatăなどにsagittaの痕跡が見られます。
ひとつの単語から,こんなにも話題が広がるなんてすごいなあ。
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