前回,郡について質問しました。
町と村はどこかの郡に属しているわね。県の地域振興局などの管轄区域が,郡と一致していることもあるけど,郡には役場もないし,役人もいないわね。
実は現在の郡は地理的名称に過ぎません。古くから使われてきた地域名に基づく名前を,地域分けのために使っているだけです。
例えば多くの都道府県では基本的には郡市単位で選挙区が決められているわね。あとは学校の運動部などの大会も郡市単位が多いかしら?
そうですね。糸魚川では平成の大合併前,新潟県議会に旧糸魚川市で1議席と西頸城郡で1議席がありましたが,今では糸魚川市1議席のみとなっています。また,学校の運動部などの大会は旧糸魚川市と西頸城郡の合同で開かれることが多かったようです。
新潟県議会は糸魚川冷遇かしら?
西頸城郡の一部は,糸魚川市ではなく上越市と合併しています。県議会の定数減の影響もあり,糸魚川市1議席に落ち着いたのでしょう。
市になると,郡から離脱するのですか?
そうね。でも元々どこの郡だったかという情報は消えないわね。例えば糸魚川市は昭和の大合併で市制施行と同時に西頸城郡から離脱したけど,西頸城郡の歴史等を語る上で,糸魚川市を無視することはできないわよね。
旧糸魚川市と西頸城郡をまとめて糸西(いとにし)と呼んでいました。今では使用頻度が減った言葉です。
現在も郡が残っているメリットはあるのですか?
現在ではあまりメリットはありませんが,例えば群馬県には平成の大合併前まで3つの東村がありました。それどころか,昭和の大合併前には5つの東村がありました。これらは郡がないと区別できません。
郡村名 | 読み方 | 廃止年月日 | 現在 |
---|---|---|---|
群馬郡東村 | ぐんま・ぐん・あずま・むら | 1954(昭和29)年4月1日 | 前橋市 |
利根郡東村 | とね・ぐん・あずま・むら | 1956(昭和31)年9月30日 | 沼田市 |
佐波郡東村 | さわ・ぐん・あずま・むら | 2005(平成17)年1月1日 | 伊勢崎市 |
勢多郡東村 | せた・ぐん・あずま・むら | 2006(平成18)年3月27日 | みどり市 |
吾妻郡東村 | あがつま・ぐん・あづま・むら | 2006(平成18)年3月27日 | 東吾妻町 |
ややこしい。
なお,東京都島嶼(とうしょ)部,すなわち伊豆諸島と小笠原諸島には,歴史的経緯から郡が導入されませんでした。まあ,郡で区別するような類似町村名はありませんが。
「嶼」は見慣れない漢字です。
「島」は山の上で鳥が休んでいる姿を描いた字です。異体字として嶋,嶌,㠀などの漢字が名字などで使われています。一方で「嶼」は小島を表します。島嶼とは「多くの島」「島々」の意味ですね。
地理ってややこしいけど,おもしろいわね。
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