外国語の文学作品から有名なフレーズを紹介するシリーズですが,文学のみならず名言も対象にします。
今回はピカソ(Picasso)のセリフを取り上げましょう。
Todo lo que puede ser imaginado es real.
想像できるすべてのものは現実である。
トド ロ ケ プエデ イマヒナド エス レアル。
ピカソの絵はいわゆる「見た通り」ではないから,鑑賞には様々な知識が必要ね。
ピカソは名前が長いそうですね。クイズ番組などで時々見かけます。
そうですね。一般的にはパブロ・ピカソまたはパブロ・ルイス・ピカソと呼ばれています。パブロが個人名,ルイスは父方の姓,ピカソは母方の姓です。本名は聖人や縁者の名前を並べた長いものになります。
落語の寿限無みたいね。
そこまで長くはありませんが,クイズの題材になるほどですから相当なものです。詳細については諸説あるようで,本やサイトによっても異なる場合があります。ここではスペイン語版のWikipediaの記載を紹介します。まずは出生証明書による本名です。
Pablo Diego José Francisco de Paula Juan Nepomuceno Cipriano de la Santísima Trinidad Ruiz Picasso
パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・フアン・ネポムセノ・シプリアノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード・ルイス・ピカソ
さっきの名言と違って,この名前は想像できないわ。
それでは洗礼証明書による名前です。
Pablo Diego José Francisco de Paula Juan Nepomuceno María de los Remedios Crispiniano de la Santísima Trinidad Ruiz y Picasso
パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・フアン・ネポムセノ・マリア・デ・ロス・レメディオス・クリスピニアノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソ
マリア・デ・ロス・レメディオスが付いて,シプリアノがクリスピニアノに変わったのかな?
これ以外にも途中部分が… Remedios Crispín Crispiano de la …となるパターンがあるようで,日本ではこの「クリスピン・クリスピニアノ」で引用しているサイトやクイズが多いようです。
似た名前だから,間違えたのかな?
実はクリスピンとクリスピニアノは双子の兄弟である聖人の名前です。
それならば「クリスピン・クリスピニアノ」もあり得る話なのかしら?
そうかもしれませんね。実はキリスト教には聖人の祝日があり,クリスピンとクリスピニアノの聖人の祝日は,ピカソの誕生日と同じ10月25日なのです。ただしカトリック教会では1962〜1965年の第2バチカン公会議で,実在を証明できない聖人の祝日を廃止しましたが。
1881年生まれのピカソの時代には有効な聖人の祝日だったのよね。誕生日の聖人名を洗礼名にするのは一般的なことだから「クリスピン・クリスピニアノ」でも不思議はないわね。
ところで,クイズ番組で見たものとカタカナ表記が異なる気がします。
例えばJuanがフアンではなくホアンとなる場合があります。日本語の「ウ」は唇を横に引きますが,スペイン語やその他多くの言語での「ウ」は唇を丸めて発音します。文字を見ずに音だけ聞くと,私でも「オ」と勘違いすることがあります。
他にも,アクセント位置を長音で表す方法があります。例えばマリーア,クリスピーン,クリスピニアーノなどです。ただし,日本人が長音で発音すると明らかに長過ぎるようです。
自然な発音って難しいなあ。
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