歴史上の人物と身内では動詞の活用が違う

語学/Language Study
アルド
アルド

前回は絵本の話から遠過去の名前を出したので,イタリア語の過去形について見てみましょう。そもそも,イタリア語には過去形が5つあります。こちらをご覧ください。

イタリア語名 日本語名(別名) 読み方
passato prossimo 近過去 きん・かこ
imperfetto 半過去 はん・かこ
passato remoto 遠過去 えん・かこ
trapassato prossimo 大過去 だい・かこ
trapassato remoto 先立過去
(前過去)
せんりつ・かこ
(ぜん・かこ)
アルド
アルド

初級レベルでは近過去と半過去が使い分けできれば問題ありません。端的にいうと,近過去は英語の現在完了形のようなもので,半過去は英語の過去進行形のようなものです。

塾生
塾生

初級レベルでも2つの過去を区別しないといけないんですね。

アルド
アルド

一方の遠過去は,南部イタリアを除き,日常会話では使いませんが,文章語としては全国で使われます。文字通り遠い過去……なのですが,時間的に遠いのではなく,心理的に遠い過去を表します。

ミライ姐
ミライ姐

遠過去までイタリア語を勉強した人なら,おそらくこのような例文を見ているはずね。

Michelangelo nacque a Caprese nel 1475 e morì a Roma nel 1564.
ミケランジェロは1475年にカプレーゼで生まれ,1564年にローマで死んだ

アルド
アルド

歴史上の出来事は基本的に遠過去で表現します。一方で,身内の出来事の場合は,近過去で表すのが普通ですね。例えばこんな文を作ってみましょう。

Il mio padre è nato a Nagano nel 1945 ed è morto a Toyama nel 2015.
私の父は1945年に長野で生まれ,2015年に富山で死んだ

アルド
アルド

動詞の部分はこのようになります。近過去が英語の現在完了形に相当するなら,遠過去は英語の過去形みたいなものです。

時制・人称 生まれる 死ぬ
原形 nascere morire
近過去・3人称単数 è nato è morto
遠過去・3人称単数 nacque morì
ミライ姐
ミライ姐

このような区別はフランス語(単純過去と近過去)やドイツ語(過去形と現在完了形)にもあります。そして両者とも会話では近過去(現在完了形)が優勢で,単純過去(過去形)は文章語です。

塾生
塾生

童話の登場人物は身内じゃないし,いつの時代かも分からないから,遠過去を使うんですね。

アルド
アルド

そうです。童話を読むと上級レベルの遠過去が普通に出てくるので,初心者にとっては難しい文章になってしまうのです。

ミライ姐
ミライ姐

なので,子供向けだからと,安易に童話などを読もうとすると,大変なことになるわよ。

アルド
アルド

なお,大過去はもう少し複雑な文で出てきます。先立過去は外国人が見る文にはまず出てこないと思いますので,ここから先は興味のある人だけが調べてみてくださいね。

ミライ姐
ミライ姐

それでは本日はここまで。

塾生
塾生

ありがとうございました。

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