2021年4月,私は第372回の実用数学技能検定準1級を受検しました。
準1級は高校3年レベルなのね。アルドさんは国立大学理学部出身で,元エンジニアだから楽勝だったでしょ?
エンジニア時代に一度も積分計算や行列計算をすることはなかったので,完全にゼロから復習しました。終わってみればギリギリ感があり,結果が待ち遠しいです。
どんな教材で学習すればいいですか?
今回は検定試験に特化して,過去問題集や出題傾向に合わせた演習書を利用しました。しかし,基礎から学ぶには,高校の教科書や市販の参考書が良いと思います。
でも,高校の数学のカリキュラムって,コロコロ変わるイメージよね。
そうですね。例えば英語であれば「分詞構文」のように,文語体のものが教科書に載っていますが,数学では重要な単元でも削除される場合があります。
英語の分詞構文なんて,文学作品や契約文などの堅い文章を読み書きするときだけ注意すればいいのに,やたらと文法問題を解かされた記憶があるわ。でも,数学では分数式のような重要な内容も,あたしの世代では教科書から削除されて,先生が補充教材を準備してくれたわね。
私やミライ姐は1994年度以降入学者のカリキュラムで,それ以前の1982年度以降入学者のカリキュラムと比較して,数学が明らかに改悪されています。
どんな内容なのですか。
一つには,科目名が分かりにくくなったことです。大学受験を前提とする普通科の高校では,一般に次のような科目を履修しました。
学年 | 1982〜1993年度入学 | 1994〜2002年度入学 |
---|---|---|
1年次 | 「数学I」 | 「数学I」「数学A」 |
2年次 | 「基礎解析」「代数・幾何」 | 「数学II」「数学B」 |
3年次(理系) | 「微分・積分」「確率・統計」 | 「数学III」「数学C」 |
数字やアルファベットでは,どんな単元があるか分かりにくいですね。
それだけではありません。1982年度カリキュラムに存在した分数式,空間図形,1次変換,微分方程式などが,1994年度カリキュラムから消えてしまいました。代わりに1994年度カリキュラムに平面幾何と複素数平面が加わりましたが,高校数学を極めるためには1次変換や微分方程式が欠かせないと思います。
あたしも先輩の教科書や参考書を見て,なぜカリキュラムを変える必要があったのかって思ったものね。1994年度カリキュラムにコンプレックスを持ったわ。
1994年度以降カリキュラムにも良い面はあって,例えば場合の数と組合せが「確率・統計」から「数学I」に移行し,1年次で学ぶようになりました。
それまで3年次理系クラスの生徒だけが学んでいたのが,1年次で必修化というのも大変だったけどね。2次曲線や1次変換のように,以前は文系でも学んでいた項目が理系のみになったのは,高校生としては楽だったけど,大人になると学び損ねた感があるわ。
ちなみに,2003年度カリキュラムでは複素数平面が消えて1次変換が復活,逆に2012年度カリキュラムでは複素数平面が復活して1次変換は行列の単元ごと消えました。複素数平面と1次変換はどちらも「回転」に関する内容なので,両方学べば理解が深まると思いますが,みなさんはどう思いますか?
教育カリキュラムって,そんなにいい加減なのですか?
時代を下るごとに,変なカリキュラムになっているような気がしますね。ただ,数学ではありませんが,1994年度カリキュラムから家庭科が男女とも必修になったことは評価すべきことですね。
昭和の男子は高校で家庭科を学んでいなかったのですね。
高校卒業後は進学や就職で新生活を始める人も多いのに,家庭科の知識が少ない男性を大量生産していたのですね。今では考えられないことです。
それはさておき,1982年度数学カリキュラムがいかに優れていたとしても,当時の教科書などは手に入らないわよね。
実は,こちらのサイトで三省堂の1982年度と1994年度の高校数学教科書を希望者に公開しています。興味のある方は利用目的をアピールして申請してみてください。申請が通ればIDとパスワードがメールで送られてきて,アクセスできるようになります。
高校生になる前に先取りしようかなあ。
また,ちくま学芸文庫で「基礎解析」「微分・積分」「確率・統計」の3冊が復刻されていますので,興味のある方は調べてみてください。
「数学I」と「代数・幾何」も復刻してほしいわね。
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