去来する取引（韓国人は漢字を学べ・第28話）

韓国語には漢字由来の単語が多いけど，日本語と決定的に異なるのは訓読みがないことね。

古代中国語の発音を真似て，それぞれの言語で音と文字を取り入れたのはどこの国でも同じです。これを日本語では音読みと呼びます。

日本ではさらに，文字に日本語訳も当てはめて読むようになったね。例えば山という漢字は日本語でも韓国語でも「サン」と読むけど，日本語ではこの字に「やま」という読み方も与えたのね。

韓国では古語に뫼/moeという単語があり，山を意味しますが，山という漢字を뫼とは読みません。

さて，日本では大和言葉にも漢字を当てはめたので，大和言葉による熟語も多く存在します。例えば入口と出口は，ニュウコウでもシュッコウでもなく，イリグチ，デグチね。

日本が朝鮮半島を統治していた時代に，このような大和言葉の熟語も多く取り入れられたため，韓国語で入口と出口はそれぞれ漢字をそのまま音読みした입구/ipguと출구/chulguとなります。

ところが……日本語では大和言葉でも，韓国語では別の漢語になる熟語は意外と多いのね。

たまたま「去来」という単語を辞書で見かけたときは，私は二度見しました。

去来とは「行ったり来たりすること」ね。心の中を思いが行ったり来たりするときに，よく使われるね。ちなみに，中国語で「行く」に相当する単語は去 qùよね。

中国語はさておき，韓国語の거래（去来）を辞書で引くと，最初に載っている意味が「取り引き」です。経済的な取り引きも，政治的な取り引きも，どちらも 거래（去来）で表すようですね。

そして……辞書で最後に載っている意味が「行き来」です。

韓国語の去来は，手紙のやり取りなどのことも指します。「行ったり来たりすること」の意味では왕래/往来/wang raeという単語もありますが，これは日本語の往来と同じ意味ですね。