筆記体

アルファベットには大文字と小文字がありますが，なぜ2種類あるのですか。

元は大文字しかなく，石に刻んでいました。紙に書くようになり，書きやすいように小文字が作られたようです。

歴史の古いギリシャ文字は，大文字と小文字が極端に違う形よね。逆に，歴史の新しいキリル文字は，ほとんどの文字で大文字と小文字の形が同じね。

手書き字体でも，活字に近い形で1文字ずつ独立して書くのものをブロック体と呼びます。一方で，字をつなげて書くものを筆記体と呼びます。タイプライターが普及し，活字で印刷できるようになるまでは，正式な文章は筆記体で書かれていました。

日本では中学校の英語の授業で筆記体が必修だった世代と，任意だった世代があるみたいだね。ちなみに「ロシア語　筆記体」で検索すると，解読できない手書き文章が出てくるわね。

ロシア語はキリル文字で書かれますが，似たような筆記体が多く，判別に苦労します。

日本語では漢字を使いますが，英語のブロック体に相当するのが楷書で，筆記体に相当するのが行書ですよね。小学校では楷書体を習うし，中学校では行書体を習います。楷書を続け書きしたものが行書ですね。

と，思っているの人も多いですが，実は間逆です。

そうなんだ。漢字の書体は，どんな順序で成立していったの？

漢字を始めて統一したのは秦の始皇帝で，その時の字体は篆書です。例えば日本の紙幣の表面（肖像画側）には「総裁之印」という印影が，裏面には「発券局長」という印影が，篆書で書かれています。

篆書は読めませんが，何となくそんな感じの字形です。

漢代になると，書きやすく改良した隷書という字体が標準になりました。

ちょっとレトロな字体として，時々見かけるわ。

そして，この隷書を走り書きしたものが，行書や，もっと崩した草書になったのです。最終的に楷書が整えられて，唐代に標準となりました。行書は，楷書ではなく隷書を崩したものなのです。

でも高校の書道の教科書は，楷行草隷篆の順で組まれていたよ。

歴史が下るにつれて，書きやすい書体になっていったから発生逆順に勉強したほうがいいという判断なのでしょう。例えば，高校数学の「微分積分」も，教科書では微分，不定積分，定積分の順で勉強しますが，歴史的には定積分，不定積分，微分の順に発展したものです。

定積分は単純に言えば面積の計算，微分は単純に言えばグラフの傾き。確かに面積のほうが直感的にわかりやすいね。

定積分の考え方は紀元前からありました。と，数学の話も漢字の話もさておき……アルファベットの筆記体は，時にブロック体とぜんぜん違う形になります。例えばキリル文字のДの筆記体は，大文字が英語のD，小文字が英語のgのようになります。

発音は英語のDと同じですね。

さらに複雑なのがヘブライ語の文字です。そもそも国の名前がイスラエル，民族の名前がユダヤ人，言語の名前がヘブライ語と，すべて異なる珍しい言語です。活字体と，ブロック体・筆記体の筆順を1枚にまとめてみましたのでお楽しみください。

ちなみに，ヘブライ語は右から左への横書きね。